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コラム

2011.10.26

「世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト」の法則
ソーシャルメディア時代の戦略PR

本田哲也/ブルーカレント・ジャパン代表取締役

 いよいよ「リンクドイン」の日本語版も満を持してローンチ。
8月に始まったmixiページの今後にも耳目が集まり、ソーシャルメディア界隈は相変わらず話題に事欠かない。

 一方、2009年頃から本格的にマーケティングへの導入が進んだ「戦略PR」。世界に10年は遅れていると言われていたPRも、この3年で一気に企業の理解と実践が進み、マーケティング活動の一端を担う手法として定着しつつある。

 この2つの潮流の合流が目の前まで来ている。戦略PRはソーシャルメディアでさらに進化し、ソーシャルメディアは戦略PRによってその可能性をさらに広げる だろう。
 この合流が、次世代マーケティングにおいて重要な役割を担うことになるのは間違いない。

 「それはわかった。でも具体的にはどう組み合わさることになるの?」私はここで、ひとつの整理の仕方を提示したい。ソーシャルメディアマーケティ ングの第一人者であるトライバルメディアハウスの池田紀行氏と、戦略PRプランナーである私がそれぞれの手法の役割論をベースに整理したもので、「『世の中 ゴト×仲間ゴト×自分ゴト』の法則」とでも呼びたくなるものだ。

 「自分ゴト」は、「この話題は自分に関係がある」と思える状態。「仲間ゴト」は「仲間はみんな知っている」という状態で、「世の中ゴト」は「誰に話してもみんな知っている」という状態。

 「話題の影響範囲」という観点から考えると、この3つがあるバランスで成立したときにその話題がパワーを持ち、人を動かすことになるだろう、という前提 にたっている。

 たとえば、2009年ごろからブーム化した「山ガール」。
ファッショナブルに登山をする(あるいは始めた)若い女性たちの総称だが、この構造はまさに上記の法則にあてはまる。

 まずは、これまで彼女たちには距離感があった「登山」が、ファッションアイテムや健康美容の文脈で「自分ゴト化」する。
 その経験や情報共有をベースに、彼女たちやその予備軍はソーシャルメディアを中心につながり、「仲間ゴト化」が加速する。
 最終的にはそのトレンド自体がマスコミ報道にのり、「世の中ゴト化」する、というわけだ。

 ここでは比較的単純化したのだが、ソーシャルメディアの役割が自分ゴトを仲間ゴトに発展させていくところにあり、戦略PRが世の中ゴトと仲間ゴトをつなげ ていく役割を果たすことが理解いただけるのではないだろうか。

 また私は、この「自分ゴトと世の中ゴトが一気通関する」というポイントが、社会的にも重要だと思っている。

 「ネットの出現により、リアルな人間関係が希薄になった」という主張は、その賛否を含め今日まで続く論旨であり、そこにあるのは、「他人ゴト」という 事象の増幅を懸念するニュアンスだろう。

 ともすると、「他人ゴト」を不必要に増やしてしまうリスクも、タコツボ化する現在のメディア環境にはある。

 そこをいかに、自分、家族や友人や同僚そして社会へと、すべてがつながり関係する事象にできるか、がポイントだ。
 これはメディアの設計=メディアプランニングの話というよりは、「文脈」の設計=コンテクストデザインの領分になるだろう。

 いずれにしても、安易なコミュニケーション設計にありがちな、「ツイッターは使うべきかどうか?」「パブリシティはテレビにさえ出ればそれでよいか?」 という議論は表層的なものである。
「メディアをどう使うか」という発想だけだと、どうしてもそうなってしまう。

 そうではなく、「話題の影響範囲をどう設計したいか」という考えに頭を切り替えないと、複雑化した情報環境におかれた消費者を動かすことは、これからど んどん難しくなる。

 そしてそれこそが、ソーシャルメディアと戦略PRが連動する本来の醍醐味なのだ。

 「では、この法則が理想的に機能して成功した例は何か?」残念ながら、それはこれから生まれることになるだろう。欧米もふくめて、今のところ先進事例はそれほど多くない。

 これは業界における人的リソースの問題や投資配分の問題などに起因するが、そのあたりはまた別の機会に筆を割くとして、言い換えればこれからチャンスが いくらでもあるということだ。

 これまでにない、ダイナミックなコミュニケーションデザインが求められる。その際に、「世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴト」の法則は、設計時の頭の整理と して重要なポイントとなるだろう。




ライタープロフィール

 本田 哲也(ほんだ てつや)
1970年生まれ。ブルーカレント・ジャパン代表取締役。戦略PRプランナー。米フライシュマンヒラード上級副社長兼パートナー。セガを経て、1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマンヒラード日本法人に入社。2006年にブルーカレントを設立、代表に就任。国内外の大手メーカーを中心に、戦略PRの実績多数。著書に「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「戦略PR」(アスキーメディアワークス)など。2011年2月に「新版 戦略PR」(アスキーメディアワークス)を上梓。

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