「ニュージーランド政府観光局" NZを地図に載せて"」のストーリー
2018年06月15日
川上徹也
企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりも「ストーリー」が重要です。この場合の「ストーリー」とは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。
ニュージーランド政府観光局の認知度向上のためのPR動画「NZを地図に載せて(getNZonthemap)」には、生活者の心を動かす「ストーリー」がありました。
3分弱のこの動画は、多くの地図にニュージランドが載っていない事実を逆手にとり、ユーモラスなトーンで自らの国の存在をアピールするというもの。ニュージーランド出身でハリウッドでも著名なコメディ俳優リス・ダービーが主演。ニュージーランド現首相ジャシンダ・アーダーンも本人役で出演していています。アンダーソン首相は、2017年10月に37歳の若さで首相になり、その後、妊娠していることを公表、出産後は6週間の産休をとることを発表したことでも話題になっている女性です。
ある日、ダービーの元に、ニュージランドが世界地図から消されているというスクープが届くところから動画は始まります。調べてみると、ニュージーランドが載ってない地図が多数あることを知ったダービーは、アーダーン首相に電話をかけ、その理由を調査すると宣言します。他国(オーストラリア、フランス、イギリス)などの陰謀ではないかと疑ったダービーですが、もうひとつ大きな理由があるのかもしれないと首相に報告するという筋書きです。
この動画が作られたきっかけは、政府観光局の役員が、出張先のアメリカでカフェの壁にあった世界地図のイラストにニュージランドが描かれていないこと気づいたことでした。それから観光局として調べてみると、遊園地などにある地球儀オブジェや各種イラストなどにも「ニュージーランドがない地図」が続々と見つかったことから、これをネタにした動画製作を企画。アンダーソン首相やリス・ダービー氏に協力をもとめて実現したといいます。
2018年5月2日、アーダーン首相の公式フェイブックで、彼女の「いくつかの地図に載っていない国の首相からのお願いです。ニュージーランドを地図に載せることに力を貸してください。もしくはニュージーランドへいらしてください」というコメントとともに、この動画は公表されました。そしてまたたく間に世界的に大きな話題になり、英ガーディアン紙、米ニューヨーク・タイムズ紙などのメディアでも紹介されました。
ではなぜこのような大きな反響があったのでしょう? それはこのPR動画に感情を揺さぶるストーリーがあったからです。 ニュージランドが、いくつかの地図に載っていないという事実に、不満や怒りをぶつけるのではなく、それを自虐的にユーモラスな表現でアピールしたことでストーリーがうまれました。また現役の首相が本人役で登場していることもインパクトがあり、彼女が「ニュージランドを地図に載せることに力を貸してください」を訴えたことも、多くの人の心を動かしました。
その結果、世界中の多くの人に「ニュージランド」を印象づけることに成功したのです。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
Profileライタープロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。最近は広告制作に留まらず、「ストーリーブランディング」の第一人者として、様々な企業のコミュニケーション戦略をサポートしている。最新刊は、『一冊のノートが「あなたの言葉」を育てる』(朝日新聞出版)
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