Column

コラム

片づけとアニメオタクと海外PR

2019年01月24日   
ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長 本田哲也

「第二次こんまりブーム」が世界で始まったようだ。
2019年1月からNetflixで新番組『Tidying Up with Marie Kondo』(邦題は『KonMari~人生がときめく片づけの魔法~』)が始まり、大きな話題になっている。


「第二次」と書いたのは、3年前の2015年の時点で、片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵氏の『人生がときめく片づけの魔法』は、25カ国以上でシリーズ合わせて累計約700万部も売るベストセラーとなり、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に村上春樹氏と並んで選ばれた。


僕は2017年に刊行した自著『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』の中で、こんまりさんの成功には海外PRの示唆があると指摘した。


そもそも、戦略PRには「関心テーマ」という考え方がある。
企業や商品の便益を一方的に伝えるのではなく、社会や相手(生活者)の関心ゴトから興味を喚起するというものだ。


PRが苦手な日本企業はここが不得手で、ついつい一方的な情報発信に走ってしまう。
それが海外が相手となれば余計に難しい。他国の社会や人々の関心に「疎い」からである。世界で成功した『片付けの魔法』は、この「関心テーマ」のフレームで説明できる。


多くの先進国では、「国民満足度」が40%をきっている状態が続いており(米ピュー研究所調べ)、人々はそれぞれの「Meaning of Life(生きる意味)」を模索している。


こうした社会的な閉塞感は、イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領誕生につながった。そして世の中では、「整理(Organize)したい」欲求が蔓延する。


平均的な家庭に約30万の「物」があり、一人平均で一生の153日にあたる時間を探し物に費やす(!)というアメリカのように、「モノを整理できる」というメリットは大きい。
それに加えて、「人間関係や生き方そのものを整理したい」というインサイトも強まっているのだ。


そこに登場したこんまり流の片付けメソッドは、いわば 「SHINTO(神道)」を連想させる新しいマインドリセットの方法論だ。
今までにないクールな発想でマインドをリセットできるーーこれが、世界における『片づけの魔法』の翻訳された「便益」だ。


さらに、この数年、世界中でブーム化したのがご存知「マインドフルネス」。
今回始まった番組を見てみると、お宅訪問のコンテンツには、よりマインドフルネスの要素が強まっているように思える。


一部のクールジャパン活動など、日本発のPRが残念ながらうまくいかない理由に、発信者(日本や日本企業)と受信者(他国の社会や生活者)の間に「コミュニケーション・ギャップ」が生まれがちなことがある。発信する方のパッションとコンテクスト(文脈)と、受け手のパッションとコンテクストが食い違うのだ。


「ここが売りです!いいでしょう?」とドヤ顔でPRしても、「知らんがな。それより気になるのはこっち」とズレてしまう。


ここで重要になるのが、「PRプラットフォーム」という発想だ。
発信者と受信者の間をとって、お互いのコンテクストを融和させるような役割であり、まさに前述の「関心テーマ」を具現化するものだろう。


2018年11月に開催されたPRカンファレンス『PR3.0』で、登壇をご一緒したm-floの☆Takuさんが紹介した「OTAQUEST」というウェブサイトは、まさにこのPRプラットフォーム的な発想だ。


日本のコンテンツをアメリカなど英語圏の人たちに発信する目的だが、サイトにとどまらず、日本の音楽、アート、ファッション、アニメ、フードなど、英語圏で戦える日本のコンテンツをひとつにまとめたコンベンションを視野に入れている。


海外の人たちは日本の情報を求めているのに、日本から情報を発信する場がない。
それは「機会損失」でしかない。


このときの話で面白かったのが、「アメリカのオタクはリア充でイケてる」というものだ。☆Takuさんが米国との関わりで感じたのが、オタクのイメージに対しての誤差。


「コスプレもするし、アニメも好きなんですけど、ちゃんと遊びに行ったり、クラブミュージックを聴いたり、すごく楽しみながら仕事もバリバリやっている。


そんな人たちが4日間で12万人が参加する大規模なアニメコンベンションに来て、『日本ってこうなんでしょ』『こうだよね、日本って』『ガンダムってこうだよね』と盛り上がっている」−−ここにも、日米間の温度感や文脈のギャップはまだ存在するように思える。


こうした巨大コミュニティを日本企業はまったく活用しきれていないし、日本における「オタク」のイメージだと整合しないような商品や企業にも大きな可能性があるだろう。


島国の内需で生きてきた日本が岐路に立たされている今、日本以外への情報発信強化は待ったなしだ。
ドメスティックな広告的発想で走ってきた平成が終わり、グローバルPR時代が始まる。

Profileライタープロフィール

本田 哲也(ほんだ てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長。
米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー 戦略PRプランナー。
「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWEEK誌によって選出された日本を代表するPR専門家。
2006年、ブルーカレント設立。2009年に『戦略PR』を上梓、広告業界にPRブームを巻き起こす。国内外での講演実績多数。
PRWEEK「PR Professional of the Year 2015」受賞。
カンヌライオンズ2015、2018公式スピーカー、カンヌライオンズ2017PR部門審査員。

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