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コラム

ブラインドサッカーにみるダイバーシティ&インクルージョンの実践

2019年03月22日   
モジョコンサルティング合同会社代表 長浜洋二

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を目前に控え、”ダイバーシティ”が重要なキーワードになっている。
”ダイバーシティ”は日本語で「多様性」を意味するが、性別、年齢、人種、国籍、民族、宗教、障がいの有無、性的指向など、目に見えるものと見えないものを含んでいる。


昨今では、「包摂」を意味する”インクルージョン”とあわせ、”ダイバーシティ&インクルージョン”として語られることも多い。
単に多様性を尊重し認め合うだけでなく、その違いを活かし合う状態を指すようになっている。


企業経営においても、社員一人ひとりの違いや個性を価値あるものとして認め、組織全体で包み込むように受容したうえで、個々人の能力やスキル、経験、強みを最大限に活かすことのできる環境を提供することが社会的にも期待されている。


こうした中、障がい者スポーツの分野でアクサ生命が独自の取り組みを進めている。同社では、コーポレート・レスポンシビリティ(CR:企業の社会的責任)の取り組みの一環として、2006年からブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー)を支援。


日本ブラインドサッカー協会が毎年開催している、ブラインドサッカーチームの日本選手権『アクサ ブレイブカップ』(2018年の決勝戦では1,189人が来場)をサポートするとともに、2017年からは新たに『アクサ 地域リーダープログラム with ブラサカ』のプログラムを共同開発して提供している。


地域リーダープログラムは約半年間にわたる人材育成プログラムであり、これまでの2年間で、全国から合計9つのブラインドサッカーチームが参加している。


プログラム前半では座学とワークショップを中心に、ビジョン・ミッションの策定、ステークホルダーの整理、ターゲット設定、カスタマージャーニーの策定などのマーケティング戦略や、チーム運営資金のファンドレイジングや実行体制の構築(チームビルディング)などを体系的に学び、プログラム後半では、策定したアクションプランを実践しながら2週間おきに講師からのフィードバックを得て、PDCA(Plan-Do-Check-Action)というマネジメント・サイクルを回す経験を積んでいく。


まさに企業という、マネジメントのノウハウや経験値、専門性を有する存在であるからこそ提供できる支援内容だと言えよう。


このプログラムの立ち上げの背景の1つとして、東京オリンピック・パラリンピック開催の決定後、ブラインドサッカーの社会的認知度が大きく高まり、全国各地域で受け皿となれるチームの必要性が高まっていることがあげられる。


さらには、各チームが2020年以降、オリンピック・パラリンピックのブームが去った後も持続的に運営できるマネジメント力を身に付け、自ら課題を解決できるスキルを身に付けられるようになること求められていることがある。


健常者・障がい者を問わず、一般的に、企業によるスポーツチームやスポーツイベントの協賛・講演の主たる狙いは、企業名や企業ロゴ等の露出による広告宣伝効果だ。


しかしながら、アクサ生命ではさらに一歩踏み込み、日本全国におけるブラインドサッカーチーム数の拡大とチームが持続的に活動を行えるようなマネジメント力改善に向けた支援を行うことで、ダイバーシティ&インクルージョンを享受する立場から、自らも生み出し、醸成する立場へとポジションを変え始めているのだ。


ダイバーシティ&インクルージョンはもはや一過性のトレンドではなく、”身近に当たり前にあるもの”として認識しなければならないステージに入った。


これからは単に広告宣伝効果を狙ったり、法定雇用率の達成といったコンプライアンス遵守のためだけではなく、イノベーションの源泉として経営の中枢にダイバーシティ&インクルージョンを位置づけ直す必要がある。


Profileライタープロフィール

長浜 洋二(ながはま ようじ)

モジョコンサルティング合同会社代表。米国ピッツバーグ大学公共政策大学院卒。

NTT、マツダ、富士通でマーケティング業務に携わる一方、米国の非営利 シンクタンクにて個人情報保護に関する法制度の調査・研究、ファンドレイジング、 ロビイングなどの経験を持つ。著書に『NPOのためのマーケティング講座』。

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