ゲームアイテムに鑑定書が付く時代がくる?
NFT(Non-Fungible Token)はゲーム業界を変革する
2021年10月6日
株式会社角川アスキー総合研究所 上床 光信
□ テクノロジーの進化と共にあるゲーム業界
ゲーム業界はテクノロジーの進化と共にある業界です。VRやクラウドゲームといった次世代ゲームのビジョンのさらに先にあるのが、ブロックチェーンゲームやNFTというキーワードです。
“さらに先”というぐらいですから、NFTはゲーム業界においてもまだまだ一般ユーザーには浸透していないのが現状です。
しかし、あえて今回はNFTにフォーカスを当てて、ゲーム業界へ及ぼす将来的なインパクト度合いやその影響の度合いや範囲を考察していきましょう。
□ ゲームアイテムと相性のいいNFT
そもそもNFTとはどういったものなのでしょうか?
専門的な解説はその分野の方々にお任せするとして、あくまでゲーム業界の立ち位置から見たNFTについて見ていきます。
NFT(Non-Fungible Token)は「代替不可能なトークン」と訳されますが、これはビットコイン(Crypto currency:暗号資産)が代替可能(Fungible)であることとよく比較され解説されています。
NFTと、ビットコインなどの暗号資産は、両者ともブロックチェーン技術を用いたいわば兄弟みたいなものですが、NFTが代替不可能なのに対して、暗号資産は代替可能と言われています。
暗号資産の1000円は常に1000円の価値を保有して、世界中の1000円の暗号資産といつでも交換可能です。
しかし、NFTの1000円は1000円以上の価値を有する場合もあります。世界に1つの“1点物”と理解すれば良いでしょう。つまり代替不可能というわけです。
ですから、同じブロックチェーンの技術を使った暗号資産と比較すると、NFTにはメタデータとして、証明書や鑑定書のような固有のデータが付いてきます。
具体的には、デジタルアート作品や、ゲーム内のアイテムに向いているのです。
ブロックチェーン技術を使うので、暗号資産のようにその価値はネット上で保証されています。
かつその上での付加価値や希少性を所有権情報通して展開することが可能なので、作品やアイテムにおいても、その正当性や希少性が保証されるのです。
現在のオンラインゲームでは、多くのユーザーがゲームアイテムを購入しています。
そのアイテムの中には希少性の高いアイテムもあります。
また、eスポーツにおいて有名選手が世界1を取った時に使用した武器みたいなものもあります。
それらが“1点物”として、保有される、あるいは、所有者を渡り歩くイメージを浮かべてみれば理解されやすいかもしれません。
アイテム個々の価値が向上し、そのアイテムが広くやり取りされるといった可能性も秘めています。
おじいさんさんから受け継いだ「(ゲームアイテムの)勇者の剣」なんてことも、いつか現実となりうるのです。
□ いずれゲーム業界でNFTは普及する
NFTが、知る人ぞ知る界隈では大きな話題になっている事や、NFTがゲームアイテムと親和性が高く、ゲームの要素のひとつとして取り入れられる可能性が高いということは前述した通りです。
しかし、まだまだ一般ユーザーには認知されていません。
そこで次は、「ゲーム業界で、本当にNFTは普及するのか?」という点について、少し考えていってみましょう。
現在では、パッケージで流通するゲームコンテンツは年々少なくなってきており、今後はネットワークゲームが主流となっていくでしょう。
ゲームに課金したり、長時間プレイして手に入れたデジタルコンテンツがユーザー個人の所有物であることが明確になることは、サーバーにコンテンツがあるネットワークゲームにおいて大きな意味を持ちます。
ユーザーは、ネットワークゲームを進める上で多くの課金をしていきます。
その課金で集めたアイテムが、ゲーム(運営)の終了でゼロになったらどうでしょう?
ユーザーの落胆は、また別の次のゲームへの課金を躊躇させるはずです。
ゲームアイテムに投じた資産は、ユーザー側からすれば普遍的な自分の財産にしたいわけです。
プラットフォームが変わっても、無くなっても。ゲーム自体が無くなっても、過去に投じた財産がゼロスタートになるのは嫌です。
この事を考えると、NFTは今後のプラットフォーム勢力争いの最も重要なKeyであると言っても過言ではありません。
この潜在的な需要(自分の投じたゲーム資産を保全したい)をコストに見合う運用ができる供給者がいれば、必ずここに手をつけます。
このデジタルコンテンツの資産の解放と制限は、ユーザーの呼び寄せや囲い込みに大きな力を発揮します。
NFTは遅かれ早かれ、競争のKEYになりやがては一般化します。
ブロックチェーンのような公平な技術を使わずとも、巨大グループが意図を持って展開する可能性もあります。
eスポーツのヒットコンテンツの多くに資金を供与しているテンセントグループがNFTとかやり出す未来。実は、もう未来ではありません。
Tencent(騰訊)がNFT取引に参入、地方裁判所が司法ブロックチェーン構築など
Profileライタープロフィール
上床 光信(うわとこ みつのぶ)
ファミ通ゲーム白書 編集長 株式会社角川アスキー総合研究所
20年以上に渡りゲーム業界のマーケティングに従事し、『ファミ通ゲーム白書』では創刊時から編集長を務める。近年のeスポーツ市場動向や隣接するエンターテイメント業界にも精通したマーケットアナリストして活躍中。
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